「親が子どもに勉強を教える」がうまくいかない理由…家庭学習のプロは何を教えたか?

坂本七郎

親が子どもに熱心に勉強を教えようとすることは、かえって「家庭学習」を失敗させることになるかもしれません。子どものやる気を引き出し、勉強を進めていくにはどうしたらいいのでしょうか。家庭学習コンサルタントの坂本七郎さんが、家庭学習の基本的な進め方を教えます。

※本稿は坂本七郎著『学力が劇的にアップ! 小学生のための「家庭学習」の教科書』(大和出版)から一部抜粋・編集したものです。

坂本七郎(家庭学習コンサルタント)
ドリームエデュケーション代表。オンライン家庭教師「まなぶてらす」主宰。1977年生まれ。塾講師や家庭教師など5000人以上の学習指導の経験から「家庭学習」こそが学力アップのカギであることを確信。全国の小・中学生とその保護者に、中学受験・高校受験に向けた家庭学習のアドバイス、親子の関わり方について教えている。

勉強を教えられる親はやっぱり有利ですよね?

◎親子学習がうまくいかなくなるパターン

最初に考えたいのは、「親は子どもに勉強を教えるべきかどうか」という問題についてです。これは、家庭学習におけるとても重要な問題だと思います。

私は、これまで塾講師や家庭教師として多くの生徒を持ち、勉強を教えてきた経験があります。それなりに教えるコツを心得ていますし、子どもがどのあたりでつまずくのか、どんな問題が入試で出題されるのかなど、基本的な知識と指導のスキルを持ってもいます。

そうしたこともあり、私は息子が小さなころからていねいに教材を選び、解説をし、勉強を教えることをしてきました。わからない問題があれば、すぐにその問題の解き方を教えてきました。

ここまでを読むと、「お子さん、恵まれた環境ですね」と思うかもしれません。しかし、何ごともいい面と悪い面があるのです。

親子学習で私が勉強を教えるようになってからしばらくすると、息子は少しずつ、私から教わることをイヤがるようになりました。

私が、「これができなかったのね。じゃあ、この問題のやり方を教えるね」と言うと、息子は下を向いたり不機嫌な表情をしたり、そっぽを向くようになったのです。解説をしても聞こうとしません。

そんな時間が過ぎていくと私もイライラしてきて、つい大きな声を出して怒ってしまうこともありました。息子は息子で、問題がわからない・できないことについて悔しい感情があり、私から教わりたくない、説明を聞きたくないという選択をしたのだと思います。

このような状態が続いていくと、次第に親子学習は困難になっていきます。

わからない問題をわかるようになってほしい、できるようになってほしい、勉強を先に進めたい──。

いくら親がそう思っていても、子どもは説明を聞こうとせずに黙ってしまうので、勉強がまったく先に進まないのです。

きっと、同じような状況のご家庭もあるのではないでしょうか?そして、いったんこうなるともう、てこでも動きません。勉強を終了するしかありません。

私自身、こうした失敗を、これまで何度もしてきました。

どうすればうまく勉強が進むのだろう? どうすれば楽しく学べるのだろう?試行錯誤をしましたが、結局同じことの繰り返しでした。いくら親が上手に教えても、いくら接し方や声かけを工夫しても、あまり変わらないのです。

私はこの失敗から、親子学習では、親が子どもに勉強を教えること、解説することはできるだけ避けなければならないということを学びました。

親子の間には「甘え」が生まれやすいのです。

もっと言うなら、子は親に甘えやすく、親は子に必要以上に厳しくあたりやすいのです。だから、親が教える家庭学習は、ほとんどうまくいきません。私も失敗ばかりでしたが、唯一うまくいくのは、以下の条件を満たすときだけでした。

教えてもいいのは、子どもから求められたときだけ。しかも、長い時間教えてはいけません。短時間でサッと教えるのがコツです。

親はできるだけ子どもに勉強を教えてはいけない。教えるとしても、教える時間は最小限にして、子どもから求められたときだけにする──。

特に勉強が得意なお母さん・お父さん、塾などでアルバイトをしていたお母さん・お父さんは、これを肝に銘じてお子さんをサポートするようにしてください。